設計開発したシステムが、幅広い業界で使われている、株式会社VRP。
そんな同社の「強み」とはなにか?
椙山女学園大学3年天木さん、名古屋市立大学の谷川くん、
岐阜大学2年伊藤くんが直接取材してきました。
「私たちには100点満点というのは、ありません」。社長は、すぐにこう
答えた。たとえお客さんから高い評価を受けても、それが必ずしも会社の
評価と一致するとは限らないのだそうだ。また学問とは異なり、あくまで
仕事であるため、自分の満足を高めるだけの設計では成り立たないと、社
長さんは言う。お客さんの求めているコストや納期に間に合わせることが、
条件であるからだ。1人で黙々と進める研究とは異なり、会社とお客さん
との100点は違う場所にあるようである。「完璧はない!」というのは、
決して自社の製品に自信や愛着を持っていないということではない。完成
したところで、ある部分に対しては、大きな達成感や喜びを感じるが、他
の部分では、すぐに後悔して反省するそうである。それは、懸命に仕事に
取り組んでいるからこそ、感じることなのではないかと感じる。今の現状
に満足しないということは、次の仕事を輝かせるための必須条件なのでは
ないかと感じた。100点満点をつけたことがないからこそ、何度でも1
00点を目指すことができる。その結果、常に向上心を忘れない会社になっ
ているのではないかと感じた。
またVRPは、技術力だけではなく、人間力も兼ね備えた会社であること
が、大きな魅力として挙げられる。社長は言う。「誰も考え付かなかった
ような物をつくる人がほしい訳ではない。チームで仕事を進めていく力の
ある人を、求めている」。つまり、コミュニケーション能力が必要だとい
うことである。営業の部署というものがある訳ではなく、お客さんに製品
を売りに行くのも、仕事の一つである。お客さまとの良い関係づくりは、
自らが気持ちよく仕事を進めるためにも、重要になる。常にお客さまがス
ターであり、技術者はスターを支える助っ人側に回るという考えが、土台
にあるのである。また良い会社づくりには、一人ひとりの社員が心地よく
働けるような環境づくりが大切であると、社長は考えている。そのため、
人間力という言葉の中には、社員へのマネジメントという意味も込められ
ているのである。良いチームづくりが、良い会社を築いていくという理念
のもとで、成り立っている会社である。「スタッフに恵まれていることが、
一番の自慢である」と、誇らしげに言う社長。社員のことを気に掛けてく
れる社長だと、社員からの評価も高い社長である。
流通業界で機械設計をしている会社であり、物流には必ずどこかに動きが
あり、好・不況の波に左右されることの少ない業界において、この会社独
特のシステムは、社員一人一人がお客様と接して設計から値段交渉までの
全てをするという個人商店の商店主の集まりというところだ。1人1人が
手に職を持ち、お客様の要望に応えながらも、シンプルさを突き詰めてい
き、また全員が仕事に誇りを持ち、昨日より今日、今日より明日と日々進
歩を重ねながら、完全に出来たことが皆無と話すのは、さすが技術者だな
と感じられた。しかし困難な技術を必要とする会社の募集要項では機械科
出身だけでなく普通科さらに異業種からの転職も歓迎している。どうして
かというと、面接やテスト、インターンを通して適性を図り、さらに入社
3年間で設計を学べるシステムを構築しているからだ。3年間で個人商店
の商店主になるため日々成長が感じられるというのも業種独特のものであ
り、出来ないことができるようになる瞬間が楽しいとおっしゃっていた。
また、技術者としての自分と営業としての自分のはざまで楽しい部分があ
ると言っていた。というのも、自分で最後まで打ち込み、満足いく物を作
ることが自分の理想であったとしても、お客様の要望は品質を少し落とし
てもいいからコストや納期を下げてほしいであったりする。自分の中で8
0点のものがお客様にとっては120点だった時など、技術者としては納
得がいかなくてもひたむきにお客様の要望に応え、最終的にお客様が喜ん
でくれた時が嬉しいともおっしゃっていました。そして、仕事は結局人で
あり、技術じゃないという考えの下、人間力を高めて1人では難しい仕事
も10人で協力して行うことを重視している。自分の仕事が100%でき
るようになって自分の位置がわかるようになり仕事に誇りが持て、楽しさ
を見出した社員の意識レベルが高いことが社長の自慢だ。
仕事のやりがい、高い仕事スキル、人間力の能力を鍛えるのにもってこい
の会社、それがVRPである。VRPの仕事は日常生活から伺うことはで
きない。流通業で使用する倉庫の管理システムのあらゆる機械の図面を手
掛けている。もちろん普段から人の目に入ることなく、世の中への直接的
な貢献度を見出せない。また、VRPでは機械のメーカーとは違い、請負
で設計のみを行っている会社なので、パソコンで図面を描く作業が多い。
そのような要因が、従業員のモチベーション低下につながってしまわない
のかという疑問を自分は抱いていた。それでも実際には、楽しそうにいき
いき働く従業員の方たち、不景気でも止むことのない仕事、VRPにはそ
のように展開できている理由があった。
まずこの仕事で本当に大切なのは機械の設計能力ではなく、コミュニケー
ション能力だということ。図面を作成する従業員が自ら営業に出向き、取
引先とすりあわせ、自社の信頼を得てもらう。一つの図面を認められ、次
の機械を依頼される。そこでも相手がどんな製品をほしがっているのかを
十分に聞き出し、設計という形にアウトプットする。そして、社内でも何
度も相談し合っていた。身内で仕事を共有し、協力して仕事を進めていく。
ただいい設計図を描いても、コミュニケーション能力なしでは成果は得ら
れないとはまさにこのことなのだろう。
VRPで働く従業員さんたちは明るい人ばかり。パソコンに向かってばか
りの根暗なイメージとは全く違う。河村社長の社員をよく見ている姿勢を
筆頭に、会話があり笑顔のこぼれる職場で、明るい職場とはまさにこのこ
とかというのを思い知らされた。それでも仕事中は当然集中し、職場がと
ても静かな空間になる。これは従業員さん一人一人の集中力の高さ、スキ
ルの高さが伺える。VRPの従業員さんは一人で設計から営業までこなさ
なくてはならない。その中で従業員一人一人のスキルの高さは他の会社メ
ーカーの設計部よりもはるかに上だ。河村社長はVRPを“個人商店の集
まりみたいな会社”だという。
個人商店でも個人商店にはないものをVRPは追求する。自分の設計や営
業に自己満足、または相手に満足させられるかどうか、二つの要因が最大
まで達したときに100点をつけるという。自分が満足していようが、お
客さんに満足してもらわなければ100点はつけられない。いくらお客さ
んに満足してもらおうと、自分の設計に満足いかなかったら100点はつ
けられない。まさに、技術職と経営職の融合。請負設計業というなかなか
ない職種だがいろいろなことがやれて、様々な能力が身に付くすごくやり
がいのある仕事だと思う。一人一人が責任感を持ち、コミュニケーション
能力を操り、チームでつくりあげるところが成果につながっているのかな
と感じた。