伝統的な和菓子もあれば、洋菓子の要素を取り入れた斬新な和菓子も取り
扱っている「伸光製菓」。ケーキ屋の三男として育ち、和菓子屋へ養子に
入ったという藤吉社長。「中庸」そんな言葉が頭に浮かぶようなお話を愛
知淑徳大学1年の門くん、神田くんが聞いてきました。
私が今回取材させて頂いたのは岐阜県岐阜市村山にある、伸光製菓株式会
社である。この会社は、1973年に岐阜市内にある4軒の和菓子屋の跡取
りが集まって、伸光製菓協力組合として設立された。
代表取締役である藤吉一郎社長は、幼少期から和菓子に触れる機会があれ
ば、高齢になっても食べ続けてもらえるとの考えからさまざまな普及活動
を行っている。その中で、役員の反対を押し切ってまでも伸光製菓の看板
商品である「飛あゆ」をモチーフにした「ひあゆ丸」というゆるキャラを
作ったことに社長の和菓子の文化を次世代に広めたいという気持ちが伝わ
った。
社長に取材をした中で特に印象に残った言葉が二つある。
まず、一つ目は「常に変化をし続けることが大切」という言葉だ。
時代の流れとともに、食の安全に対する考えが強くなっていることに対し
て昔のように一人しかできない秘伝の技などを大切にするのではなく、だ
れでもできる仕事内容にし、衛生面を徹底的に意識するようにした。この
ように社長は、周りの流れをしっかりと見ることのできる広い視野をもち、
変化し続けることを大切にしている。
二つ目は、「人に仕事をつけるのでなく、仕事に人をつけろ」という言葉
だ。社長はお菓子作りにおいて重要な作業行程も新入社員にもやらせる。
昔では、最後の重要行程になると大将がその作業を担う事が当たり前だっ
た。しかしそれでは、ただの仕事助手になってしまう。一人前にするため、
自覚を持たせるために失敗をさせて育てる。というのが社長の考え方だ。
このように社長は社員のことをよく考えていて、仕事のことだけではなく
今自分の思っていることを紙に書かせるというものを定期的に行っている。
これは自分の下で働いている人の気持ちを知り、より良く仕事ができるよ
うにしたいという社長の思いから行われているものである。
私は今回の取材から社長と社員の繋がりが大切ということを知った。大手
企業では、社長と会うこともできず、一般社員の思いなど社長が知る術も
ないのだろう。働く社員がいて、はじめて会社が成り立つ。大手企業も安
定力など魅力に感じるところも確かにあるが、社長との距離が近く自分の
やりがいを感じやすい企業も魅力に感じた。
伸光製菓さんを取材して作業場を見てまず思ったのが、意外とすっきりし
ているということである。和菓子を制作するにあったってはもっと機械が
あり、狭いスペースでの作業だろうと思っていたが、とても広く快適に仕
事ができる場所だと思った。
藤吉社長の話を聞いて一番印象的だったのが、「人に仕事をつけるのでな
く、仕事に人をつけろ」という言葉である。秘伝のタレがあり何年も注ぎ
足して今までやってきている店があるとする。たしかに先代から受け継が
れてきたものは歴史があり、魅力の一つである。しかしそれは、受け継い
でいける人が決められており、だれでもできるものではない。仕事はだれ
もができるものでないとやっていけず、また失敗を恐れて挑戦をさせない
と人も会社も成長できないということだ。この意見にはとても共感できる
ものがあり、何事も失敗しなければ上達はしないし、失敗した時の対処も
できないと思う。
また物の見方は二つあり、例えば、大量生産ができるほうがいいか、昔か
ら受け継がれているこだわりのものがいいのか、ということで言えば、大
量生産ができてもそれに見合った需要がないと売れないし、こだわりのも
のがあっても昔からのもので衛生的に大丈夫か技術を受け継げるかなどの
見方があると思う。伸光製菓さんはその中間だという。僕はそこが魅力だ
と思う。もし今後和菓子が売れなくなるなら洋菓子も売るという。また他
の会社が作っていて良いと思うものがあれば、それをもとにアレンジを加
えて商品開発をするという。そうやって時代の変化に応じて会社も変化し
ていく必要があると考えているからである。このように偏りのない伸光製
菓さんは多くの取引先があり、どこかの会社と取引がなくなっても、やっ
ていけるのも強みである。
これはこだわりがないということではない。社長は岐阜といえば「あゆ菓
子」と言われるようにしようというくらいあゆ菓子にこだわりをもってい
る。役員の反対をおしきって自費で作られたゆるキャラの「ひあゆ丸」は
社長のこだわりの象徴であり、「飛あゆ」をひろめたいという本気の思い
が伝わるものである。
これらの話から自分の考えをもつことも大切だが、もっといろんな視点か
ら物を見る大切さというものを感じた。そうすることで今まで見えなかっ
たものが見えるようになったり、それにより新しい発見や打開策などが見
つかったりする可能性がある。これから視野を広くもつことを意識しなが
ら、さまざまなことにチャレンジし、多くの事を吸収していきたいと思わ
せてくれた会社だった。