ミニキッチンを専門に製造販売する亀井製作所。車いすで生活されている
方のためのもの、移動式のもの、利用者に合わせた工夫や洗練されたデザ
インが施された製品を次々と生み出している。しかし、ここに至るまでに
は苦難の道があったようだ。今を築いた亀井社長の想い、そしてそれを引
き継ぐ亀井専務の考えを愛知淑徳大学2年の加藤くん、齋藤さんが聞いて
きました。
木工所からミニキッチン専門企業に転身し大手電機メーカーの下請けから
独立した亀井製作所は、現在、55期目を迎えている。55期まで企業と
して存続している企業は日本で1%しかないそうだ。55期に至るまでに
は大きな壁があり、その壁を亀井社長自身が乗り越えてきた。苦難があっ
たからこそ、同社は「日本一のミニキッチンメーカーになろう」という強
い理念とお客さまへの柔軟な対応で、長い間経営を続けてきたのである。
「パーシモン」という商品でキッチンオブザイヤー2013コンセプトデ
ザイン賞を受賞した亀井製作所。
パーシモンは亀井社長が休日に奥さんのために料理を作ってあげたいとい
う思いからできた商品だ。「パーシモン」は見た目大きな箱のようだが、
天板を開くとIHヒーターが2つあり、収納式の蛇口がついている。収納
してある時は実にコンパクトである。更に、食器洗い機と、生ゴミ分解機
が付いており、料理が苦手な社長でも片付けが簡単にできるように備え付
けられている。私はこの商品にとても感動した。まずは見た目のかっこよ
さ、極限までシンプルにしてある収納方式、片付けのことまで考えてある
装置。そして、最も感動した所が冒頭でも触れた、奥さんに料理を作って
あげたいという、このキッチンを作るに至った経緯である。基本的に亀井
社長の「こんなものがあったらいいな」という発想をもとに商品は作られ
ている。他にも、色がピンクの物や、高齢の方の為に車いすでも使いやす
いキッチン等がある。今新たに挑戦していることは、キッチンのグラデー
ション塗装だそうだ。これは、「パーシモン」にも施されており、ここに
も競争力をつけようという企業努力が垣間見える。亀井製作所は、パーシ
モンの他にも、さまざまな商品を開発しており、向上心にあふれる企業だ。
亀井社長のアイデアは、主に人のためになる物を作ろうとしているところ
から来ている。その理由は、社長の人柄が要因で、考え方が自分本位でな
く常に他人のこと考えている。他人のことを考えているからこそ、こうし
よう、ああしようというアイデアが出てくるのだ。試作品をいくつか拝見
させていただいたが、どれも人のためにこんな風に役に立つものがあれば
いいなという考えから来ている物ばかりだった。「人に喜んでもらうこと
が最も大きな喜びであり、やりがいだ」と亀井社長は語っていた。
社長の人柄と魅力ある製品で苦難を乗り越え日本有数の長寿企業となった
亀井製作所、これからは、社長の甥であり専務の伸一さんが思いを受け継
ぎ会社を動かしていくようだ。これからも人のためになる製品を作り続け
てほしいと思う。
亀井製作所はミニキッチンのメーカーで、「Repeat」というブランド名で
販売している。この「Repeat」という名前の由来は、繰り返しお客さまか
ら評価されていきたい、愛されていきたいという思いだ。このミニキッチ
ンメーカーとなるまでには厳しい試練があった。
この会社は、昭和23年に木工所として創業した。家の柱の加工や藁切り
機からはじまり、その後大手電機メーカーのミニキッチン部門で下請けと
して製品を製造していた。しかしバブル崩壊後、ミニキッチンの需要減少
や同業他社の増加により受注が減少、そして会社存続の危機を迎えた。当
時、下請けとして製品を設計・製造していたため、人・技術・ノウハウが
あった。また、とある縁で「亀井さんのところで作ってくれませんか?」
という注文から、「KS(亀井製作所の略)」というブランド名でミニキ
ッチンを製造した。そこから数社ほど注文があった後、営業や口コミによ
り評判となってきた。その理由は、納期のスピードや値段、細かい注文へ
の対応など、他社よりも優れたサービスであったからだ。そこから、ミニ
キッチン専門のメーカーへとなった。
「日本一のミニキッチンメーカーになろう」、これは亀井製作所のスロー
ガンである。社長曰く、「商品に魂をこめたところで日本一になろう」と
のこと。下請けのときは、決められた仕様に従い淡々と設計・製造をして
いた。しかしメーカーとなると、すべての判断が自社にある。「対応次第
だが、無理をしてでも頑張って相手の希望に近付くことが一番深い喜びで
はないだろうか」この社長の想いが会社復活へとつながったのだろう。
「どうせ仕事をするなら楽しくやろうよ。」これにも、社長の想いが込め
られている。ただ仕事をこなすのではなく、気持ちをこめてお客さまのも
とへ届けたい。そんなエピソードがあった。東日本大震災が起こった後、
仮設住宅用のミニキッチンを納入した。途中から、社員の提案で製品に復
興を願うシールを貼りだした。社長の想いは社員へ届き、会社全体で魂を
こめた日本一を目指しているようだ。
現在、Repeatブランドには多種多様な製品が揃っている。これは、「あ
ったらいいな」が実現したものだ。困っている人を助けるためのキッチン、
社長の理想のキッチン、木工所が原点ということで木がメインのキッチン
など、他社では見られない製品の開発をしている。ただし、商品の発案は
社長からで、社員からの意見をどのように集めるかは今後の課題のようだ。
しかし、社長の想いは通じ、社員からの反応があるから、難しくはないだ
ろう。人に寄り添う「あったらいいな」の実現に全力な会社だから。