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1000分の1ミリ単位の精度を誇る世界トップレベルの研磨技術と品質検査
を武器に、工作機械、航空機、人工衛星などに使われる精密機械部品の最
終研磨加工や、品質検査を行っている大堀研磨工業所。大手メーカーも一
目置くその技術を手に入れるに至るまでのストーリーを愛知淑徳大学2年
の竹内さん、川嶋くんが大堀社長に聞いてきました。

大堀研磨工業所は「研磨一筋・技術追求」の信念に基づき工作機械部品か
ら航空宇宙部品など、精密機械部品の最終研磨加工や部品の品質検査を手
掛けている従業員数40人の“町工場”だ。
文系の私にとって、機械の部品を加工しているモノづくりの現場はなかな
か馴染みがないが、たくさんの研磨機械や全国でも2台しかない測定器を
見学できるということで未知の世界にワクワクしながら取材へ向かった。
大堀研磨工業所は創業以来、研磨加工を専門に行ういわゆる下請けの町工
場だったが、2008年のリーマンショック後、メーカーからの発注がぐんと
減った。「今まで100%下請けで仕事をするのをただ待っているだけだっ
た。その時すごかったのはメーカーで、実は大堀研磨には技術がなかった
ことに気づいた。」と大堀社長は語る。

存続するには、研磨技術の向上と航空機部品などの新しい分野への参入が
必要不可欠。そのために-従業員を集めて資格を取るなどの勉強を重ねた。
そして社長は今までの楽な仕事は断り、会社が進んできた道を急カーブさ
せ、会社を大きく変えることへの覚悟を決めたそうだ。そこからは、メー
カーではできない細かい作業や、手間のかかる作業がある製品の依頼を積
極的に受けるようになった。

会社の従業員も一丸となってこの危機を乗り越え、今も発展し続けるとこ
ろに力強い町工場の魅力を感じながらも、私は大堀社長の現場の環境づく
りや従業員を大切にする姿に最も魅力を感じた。

いろいろなお話を伺う中で最も衝撃を受けたのが、お客様重視から従業員
重視へと転換したという話だった。大堀研磨工業所は、どんなに忙しくて
も仕事以外の時間を大切にできる環境が整っているそうだ。労働時間外で
働かない、土日はしっかりと家族と過ごせる時間を作る、など従業員のプ
ライベートの時間を尊重している。その理由は、家庭が充実していないと
仕事を頑張る意義が分からなくなってしまうから。「そこから仕事を好き
になってほしい。そしていつしかそんな自分を好きになってほしい。どん
な技術力よりもその心を育てることが、いい製品を作ることに繋がるんで
す。」と大堀社長は話す。

また、私は社長の「学歴がなくても大手とフィフティーフィフティーに付
き合える。プライドと自信を持ってほしい。」という従業員を誇りに思っ
ているその顔に惹かれた。従業員全員と一対一で向き合い、一人ひとり大
切に育て、従業員の“人”としての成長をサポートするという社長はそうは
いないだろう。
今後は医療機器の分野への参入や、日本で作ったものを世界に売るという
海外展開へ力を入れたいそうだ。“世界に通用する町工場”はどんどん加速
して動いている。

リーマンショックが起こるまでは大堀研磨工業所は下請けが100パーセント
であった。リーマンショック後、一つのことに気づかされる。日本のものづ
くりの技術が高いと評されていたのはメーカーのみで、実は下請けである大
堀研磨には技術がないことである。それゆえ、大堀研磨工業所のものづくり
が変わり始めたのはつい2~3年前のことである。大手からの仕事は断り、
慣れ親しんだ仕事からの転換という、かなり勇気のいる行動に出た。
難しい注文が舞い込んできたとしても、失敗してもいいからまず注文を受け
ることを大堀研磨工業所のスタンスとした。それに加えて徹底した品質管理
を行うという、まさに変化を日常とし、仕事に対して妥協のない精神に感動
した。

社長は従業員満足度が仕事の満足度とイコールになると考えるため、自分事
として仕事をとらえ、心が育つ環境づくりをすることも大切にしている。そ
の例として、悩み事なく技術スキルアップに専念できるように、1対1で、
時間無制限で何でも話す時間を設けている。工場見学の際に、製品の出来を
自分たちの耳や手の感覚で判断する姿が多くあり、やはり機械があるだけで
は不完全で、それを高い精度で使いこなす「人の手」が必要なのだと感じた。
町工場として地域貢献するならば、従業員も大切にしていかなくてはならな
いという考えが社長にはあり、それが地元の雇用を増やすことや、残業は1
時間までとして家族との時間を大切にするということにつながっている。ま
た30歳以上になった時に能力を発揮するためには、20代の基礎経験が大
切だということもおっしゃっていた。その言葉は社員向けだけではなく私に
対しても言われているような気がした。自分を成長させたいという社員の熱
意を買う、とても社員思いの社長である。

何年後かに昔のものづくりが日本に戻ってくるということも社長はおっしゃ
っていた。その時に大堀研磨工業所のような町工場か無くなれば、日本の技
術の発展は著しく損なわれる。だからこそ日々の試行錯誤の賜物である少量
多品種高品質の製品を作り、なおかつその製品を高く評価してくれる場所を
探すことが大切なのだと感じた。それが大手と50:50で取引できるよう
になる秘訣だと分かった。宇宙航空産業等、さまざまな分野にも参入してい
る大堀研磨工業所は、まさに町工場から世界へ飛び立つ足がかりとなるので
ある。品質重視に転換し利益は減ったと言っていたが、私はこれからさらに
需要が増し、世界に通用する町工場になり得ると確信した。


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