石黒商事はガソリンスタンド、家庭用LPガス、太陽光発電、住宅リフォー
ム、フィットネスクラブ(カーブスの店舗運営)、喫茶店(コメダ珈琲の
店舗運営)など多岐にわたる事業を展開している。このように多様な事業
展開をするに至った経緯、想いを名古屋外国語大学3年の浦田さん、名古
屋商科大学2年の伊藤くんが聞いてきました。
産業用や業務用の燃料の販売を始めとし、商社として時代とともに成長し
てきた石黒商事。現在は、家庭用LPガスや太陽光などオールエネルギーを
取り扱うほか、喫茶店経営や住宅リフォーム、フィットネス運営などを行
っている。事業としては一見バラバラ。しかし一つ一つの取り組みには社
長のしっかりとした意図と想いがある。三代目として家業を引き継ぎ25年、
石黒社長に話を伺った。
社長の最終目標。それは土岐を中心とした町の地域活性である。幼いころ
は栄えていた駅前や商店街がすたれていくのを見て寂しさを感じていたと
いう。また、社長に就任し生まれ育った場所で商売をするようになって、
こんな町で商売をしたって儲からないだろうと言われるのが屈辱だった。
昔に戻ることはできなくても、幼いころから愛している地元を元気にした
いという純粋な想いから地域活性に取り組むようになった。会社として地
域に貢献できることは何か。それは、町の人が集まることができる場を作
ることだと社長は考えた。ある時、ガソリンスタンドと喫茶店のコメダを
併設した場を作ることを思いついた。そこは人通りも少なく寂しい場所だ
った。社員にも反対されたが、現在では周囲に町ができるほどの繁盛ぶり
である。人が集まる場を積極的に作ることで周囲のレストランまで繁盛す
るなどの相乗効果がある。この相乗効果こそ、地域活性には欠かせない。
社長が一番大切に思う、会社としての使命。それは地域活性、そして社員
と家族を幸せにすることである。理由は、社長の想いを態度で示せば、社
員は答えてくれるという気持ちがあるからである。社員のやりがい、生き
がい、働き甲斐。この3つを満たすための具体的な制度はたくさんある。
例えば、社宅制度。一人なら月1万円という価格で住むことができる。毎
年2泊3日の社員旅行がある。2回に1回は海外旅行、さらに驚くことに
パート社員も一緒に連れて行く。正社員だろうがパートだろうが石黒商事
のために頑張る人。パートで十分な給料を与えられない分、せめて社員旅
行だけでもという社長の粋な計らいだ。さらに、社員全員に社長のメッセ
ージを回覧している。これは15年続いていることで、常に社長も想いを社
員に伝える工夫を欠かさない。このような社長の行動が社員の働きがいや
生きがいに繋がっているのではないだろうか。
「冒険しなければ飛躍はない」。時にはやらないという決断も必要、しか
し、やると決めたらやる。途中で辞めてしまうから失敗になるのだ。成功
するまで続けること。
常にこのような気持ちを持っている社長の存在が、石黒商事の魅力なので
はないだろうか。
会社が一番に求めるものは何か。利益であったり、規模の拡大であったり、
それぞれの会社でさまざまだろう。今回の取材を通して一番に感じたのは、
人の大切さだった。
石黒商事株式会社は岐阜県土岐市に本社を置き、古くからプロパンガスの
販売や管理を行っている。しかし年々変化する顧客ニーズに応えるため業
務の多角化を進めている。現在ではフランチャイズによるコメダ珈琲や、
フィットネスクラブの運営など全く異なった業種へ事業を拡大している最
中だ。
実はコメダ珈琲の出店に至る過程がおもしろい。土岐市の商店街はかつて
の賑わいに比べればシャッターを閉めた店が増え、静けさが広がり、駅前
であっても人通りが少なくなっているのが現状だ。
この状況を少しでも改善し人通りを増やしたい、そんな想いがコメダ珈琲
の開店へとつながった。しかし、いかんせん人通りが少ないことから、契
約時に赤字であっても異議を申し立てないという誓約が設けられるほどで、
現在でも営業利益はそれほど多くないというのが現状である。それでも営
業を続けるのは、コーヒーを飲むだけの空間ではなく、近所の人とおしゃ
べりをするなどコミュニティーの人どうしの繋がりを強くする非常に重要
な空間となりつつあり、さらに人との繋がるきっかけが多くなったことで
街全体の賑わいが少しずつ出てきているからである。
このように街の賑わいや人々のことを大切にしながら経営を続ける石黒商
事だが、社員のことも非常に大切に想っている。例えば社員旅行は国内、
海外と交互に行くなどかなり太っ腹だ。ただそれだけなら他の会社でもあ
りそうなことなのだが、ここからが違う。なんとある程度長い期間働いて
くれているパートさんも社員旅行に連れて行く。しかも費用は全て会社持
ちで。普通に考えれば、なかなかありえない。しかし社長の想いとして、
どんな立場であっても頑張っている人を大切にしたいという気持ちがある
からだそうだ。
石黒商事の全てのことを知ったわけではないが、社員のことを非常に大切
にしていることが一つの例をとってもよくわかる。さらに街のこと、街に
住んでいる人のことを大切にしていることもよくわかった。
人という存在を非常に大切にし続けているからこそ、現在の会社の繁栄が
あるのではないかと感じた。