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2012年「第2回全日本製造業コマ大戦」で優勝したシオン。本業の工作機
械部品や航空機部品製造による精密切削加工技術があるからこそ日本一の
称号を手にすることができたのであろう。しかし、その背景には技術以外
にもシオンだからこそ成し得たと思われる要因があるようだ。岐阜大学4
年の猪飼くん、愛知淑徳大学1年の森田さんが山田社長の話から、その要
因を探りました。

有限会社シオンは、金属を加工し、工作機械や航空機などの部品を作って
おり、そういった事業を通じて、社員に仕事をすることへの喜びや楽しみ
を与え、その影響を、社員の家族や地域の人々にまで広めている。それは
昔から、少しずつ自然と行っていたことでもあるように私は感じた。

会社は、山田社長の父と母がバスの部品を製作するところから始まった。
当時はオイルショックの影響もあり、なかなか仕事が安定しなかったとい
う。しかし、そういった状況でも、父と母は誇りと生きがいを持って仕事
に取り組んでいた。そんな両親の影響もあり、山田社長も幼いころから工
作が好きだったそうだ。
大人になった山田社長は別の会社に就職したが、そこは規模が大きく、仕
事の分業が行われており、モノを作る喜びをあまり感じることができなか
ったという。そんなときにいきいきと仕事をしている両親の姿を思い出し
たそうだ。そして、「今の仕事はクリエイティブでない」、「自分で製品
を最初から最後まで作るという達成感もない」と感じた山田社長は、両親
の会社を継ぐことを決心したという。

このような自らの経験から、自分の会社の社員には、全て自分で作ったと
いう満足感を味わってほしいと望んでいる。そのために、社員には1人1
台ずつ工作機械を与え、製品を作る全ての工程を1人で行えるように指導
している。しかし1つの製品を1人で作るということは、1人に対する責
任が大きいということである。もし質の悪い製品を作った時には責任を逃
れることができない。だが、質のよい製品を作った時には、この責任が大
きな満足感・達成感になり、仕事にやりがいを持てるようになるという。
また、シオンでは社員全員に、何かのリーダーの役割を与えている。リー
ダーになることで、普段はなかなかこういった立場になることが少ない人
も、自ら行動・発言し、周りに影響を与えて行かねばならない。これは仕
事のやりがいに繋がるだけでなく、コミュニケーション能力を育てること
にもなる。

こういったことを含め、シオンの人材教育では、伝えること・聞くことに
重点を置いている。それによって社員の人格も少しずつ変化し、家庭や地
域でも頼られる存在となったという。全日本製造業コマ大戦での優勝をき
っかけに、メディアでも取りざたされ、講演会を行う機会が増えてきたと
きも、社員全員で講演会を行おうと山田社長が提案したところ、嫌がる社
員はいなかったという。
このようにシオンの魅力は、社員の喜びを、その家族や地域の喜びにまで
変えてしまうところにあるのではないだろうか。

山のトンネルをぬけると冬の森であった風景が真っ白に変わった。人も車
もあまり見かけない、そんな岐阜の山腹に有限会社シオンは佇んでいた。
シオンは航空機や印刷機などの部品の製造を手掛けている会社だ。工場に
近づくと、鳴りやまない機械の音が扉のすぐ向こうから聞こえてきた。
従業員数7人で、決して「大きい」とは言えないこのシオン。しかし全日
本製造業コマ大戦で優勝するという「大きなこと」を成し遂げた。

シオンで最も大切にしていることはコミュニケーションだ。作業をする際、
従業員は四六時中機械と図面と向き合っている。しかしそれでは従業員同
士のコミュニケーションは十分にとれない。そこで山田社長は朝礼に工夫
を施した。朝礼といわれたら上司の指示を聞き、業務内容の発表…という
事務的なイメージを抱くのではないだろうか。しかしそんなイメージを覆
すのがシオンの朝礼だ。毎日の朝礼は30分以上行い、業務の報告はもちろ
んのこと、朝礼にクイズを出題する。漢字のクイズから始まり、都道府県
(時には島までも)の日本列島クイズなど内容はさまざまである。中には
クイズの予習をしてくる優秀な従業員もいるそうだ。この朝礼は従業員間
での大切なコミュニケーションツールとなっている。

また、シオンでは一人ひとりが必ず何かしらのリーダーを担うようになっ
ている。レクリエーションであったり、メンテナンスであったり、はたま
た掃除であったり。この制度について山田社長はこのように語っていた。
「日本人はリーダー気質を生まれながらにして持っているにも関わらず、
発揮することを遠慮している」リーダーを請け負うことで影響力・自己発
信力の強い人材の育成を目指しているのだそうだ。
コマが優勝した背景には山田社長のこのような工夫があるのではないだろ
うか。従業員の団結力、一人ひとりが持つ責任感は日々の仕事の中で培っ
ていった。そして強いコマを作る際、それが発揮されたのだ。山田社長に
この大会に出ようと思ったきっかけを伺った。なんと「勘」だそうだ。自
分の専門分野でないにも関わらず優勝までしてしまったとは驚かされる。

今回の取材で日本一強いコマ、そして他社の開発したコマたちを拝見した。
他社のコマは回転と同時に花弁のように開くなど一目で工夫が分かった。
しかしシオンのコマはなんとシンプルなのだろう。金属性で確かにずっし
りとしているが、これといった外見的な特徴はない。しかし、説明を聞い
ていると目に見えないたくさんの工夫が施されていた。
この日本一のコマが完成するまでに100種類以上の試作品を製造したとい
う。100種類も??と驚いたのだが、従業員一人ひとりがアイディアを持
ち合ったそうだ。考えたアイディアを形にしてみる。そして時には社内大
会も開催した。負けてしまうと敗因を考えてまた改善していく。一人ひと
りが周りに触発されて、より強い新たなコマを作っていく。日本一のコマ
は従業員全員で高めあい、意見を交換し合いながら完成したのだ。
シオンの強みは従業員同士のコミュニケーション、一人ひとりの責任感の
強さであろう。だから大手企業や、知識溢れる研究者の作ったコマではな
く、このシオンが作ったコマが優勝まで勝ち進めたのだ。コマを私たちに
見せているときの山田社長は、少年のように好奇心あふれる瞳をしていた
のが印象的であった。


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