外はカリッと、中はモチモチ!
大手通販サイトで不動の人気を誇るベーグルが、実は大垣で作られていま
す。食べると思わず笑顔がこぼれる、そんな商品のこだわりの秘密を名古
屋市立大学2年高山くん、岐阜大学3年河合くんが探ってきました。
曽祖父の食に対する想いを聞きながら育ち、今でも家族が先代の想いの実
現のため挑戦し続けているところがこのエルクアトロギャッツの魅力だ。
戦後、曽祖父の会社は委託事業としてパンを配給するようになった。「温
かなパンを配給すると、まるで赤子を抱くかのように大切に受け取り、笑
顔でありがとうと言ってくれる。その笑顔で自分達も幸せになる」という、
“食の文化“を曽祖父から教わったという友作専務。その想いを実現させ
るべく、日本はもちろん、海外でもエルクアトロギャッツは挑戦し続けて
いる。
楽天市場ランキング1位、全国ご当地パン祭り3位!全国でギャッツのベ
ーグルを知ってもらうためには、お店を出すにも、買ってもらうためにも、
一番に認知の向上が必要だった。これは、努力・研究を怠らずに続けてき
たからこそ、導き出した結果だった。
さらに、Web販売や百貨店販売でも売れるようになってきた頃、「なぜ
大垣市で作っているのに焼き立てを食べられないのか」とのお客さんから
の声が届いた。同社では、すぐに焼き立てを食べられるカフェの立ち上げ
を実行した。
地元大垣に愛されるこのベーグルは、水都と言われる大垣の地下水と岐阜
の小麦等の地元の産物でできている。つまり、今の味は大垣だからこそ生
まれたものであり、この大垣の地だからこそできるベーグルです。ベーグ
ルは生き物のように繊細で、気温・湿度・水の量等の様々な要因で味が変
わり、現在の味にたどりつくまでは試行錯誤の繰り返しだったそうだ。
さらに良いものを届けるために、バックボーンへの配慮も欠かせない。雇
用者と労働者ではく一緒に働くパートナーとして考え、「作って頂いてい
る」という意識を欠かさず、常に感謝する姿勢を貫いているそうだ。さら
に、従業員には商品を好きになってもらうことを意識している。売り子に
は必ず、現場から入らせ、ベーグル職人の一生懸命さ、その商品の深みを
くみ取らせることを大事にしている。ただ売るだけではない、本当にその
商品が好きだから売る。バックボーンは商品を売る上で欠かせないものだ。
同社のこういった柔軟で謙虚な姿勢は、全て曽祖父の「笑顔をもらうこと
で自分も幸せになる」という想いが起源であり、食の文化を家族が引き継
いでいきたいという共感と、これを日本のためにも引き継いでいかなけれ
ばならないという使命感を原動力としている。全ての施策がこの原動力の
部分に行きつくところに、このアリス開運堂の魅力を感じた。
同社の想いは日本国内だけにとどまることはなかった。ベトナムのダナン。
戦後の厳しい状況だった日本を支えてきたからこそ、90年続いてきたか
らこそ、今度はこの国を支える必要があると気づいた。将来のベトナムを
支える人材を育てるため、学校での教育は非常に重要だ。しかし、一番の
土台である、「食」が無ければ学ぶものも学べない。ベトナムの学校給食
を支える必要があると海外進出に乗り出した。戦略として、現地で好まれ
る味・現地の雇用者を雇うためのシステム等、考えることは非常に多いが、
友作専務から溢れるパワーには不安を感じさせない何かがあった。
そんな友作専務の人生の目標は挑戦し続けることだそうだ。
まさに会社は人生そのもの、仕事に生きる姿勢がかっこよかった。
大正12年に創業し、およそ90年の歴史を持つベーグル屋が大垣に存在
する。「エルクアトロギャッツ」の名前で、楽天の食品部門日本一にも輝
いたことのあるアリス開運堂だ。創業時は和菓子屋として運営していたア
リス開運堂。戦後直後は日本全体で食糧不足に陥ったことから配給や給食
に向けたパンの製造を始め、それ以降パンの製造へとシフトしていった。
しかし、日本が先進国となり次第に大手の企業が力をつけていくにつれ、
下請けの企業として大量生産と価格削減を迫られるようになる。そんな中、
存亡の危機となったアリス開運堂を救ったのは、現在アリス開運堂を運営
している4人の兄弟であった。4人それぞれが生産、広報、ネット販売、
営業など自分の得意な分野を担っていくことで事業を好転させた。また、
ベーグルへの特化、楽天市場への出店などを仕掛けていったことも大きな
要因である。当時ベーグルを主力とする店が少なかった楽天市場で、いち
早く流行を見抜き、販売することによって多くの顧客を取り込んだ。その
甲斐もあってネット通販の売り上げは最高で月2700万円に達し、現在
も楽天市場パン部門で一位となっている。こうした波に乗り、今では多店
舗展開や海外展開も視野に入れている。実際に海外展開は場所、販売形態、
販売する商品といった内容も明確になっており、具体的なビジョンが見え
ている。
「焼きたてのおいしさを多くの人に知ってもらいたい。焼きたてのベーグ
ルはこんなにもおいしいのだと」。そう語るのはアリス開運堂で専務取締
役を務められている、河瀬友作さんだ。そのため、ネット販売や工場から
離れた店舗でも焼きたてが味わえるよう工夫が凝らされている。あらかじ
めベーグルを5~7部焼きにしておくことで、食べる前に一手間加えるだ
けで、工場の焼きたてに近い状態が味わえるようになっている。こうした
友作さんの焼きたてへのこだわりは創業者である曽祖父から受け継いだも
のである。戦後食べるものが無く、配給として焼きたてのパンを配ると子
どもたちが満面の笑みを浮かべたことから、焼きたての大切さに気づかさ
れたそうだ。「私たちはお客様の笑顔を作っているのではない、お客様か
ら笑顔をいただいているのだ」。曽祖父から伝わったその教えを心に留め
ながら、これからも友作さんは仕掛け続ける。