「一人でもほしい人がいるなら、そこにニーズがある」。
固定概念を覆す、アイディアマンの下田社長。
そこに隠されたストーリーに、岐阜大学山口くんが迫りました。
同業者にも愛され続ける舗装屋、それがシモダ道路だ。一般に道路の舗装
などの公共事業の請負には、同業者同士がライバル関係であることがほと
んどだ。しかし下田社長は強く断言された。「同業者はライバルではない。
同志だ」。この言葉通り、下田社長は舗装現場で働く人の「困った」を改
善し、「良かった」を生み出す舗装道具の販売を始めた。
シモダ道路の舗装道具の販売のきっかけは倒産の危機に陥ったことだ。つ
らい時だったが、やり通したいと思う社長が再建に目を向けたのが、「シ
モダトンボ」だ。無段階伸縮、握りやすさ、メンテナンスのしやすさ等、
どの職人が使っても使いやすいのがポイント。「使い込めば使い込むほど、
良さがわかる」。実際、こだわりの強い職人が多い業界で、シモダトンボ
を買い求める人の7割はリピーター、舗装業界の職人だそうだ。分かる人に
しか分からない良さだったが、ニーズがあるからこそ徹底的に追及してい
こうとした結果、舗装道具の販売につながった。
さらに、社長は舗装道具の移動販売をしながら、各会社の職人と話すこと
で気づいたことがあった。それは、それぞれの職人たちに秘密道具がある
ことだ。その会社では年に数回しか使われないような道具かもしれないが、
全国ではそれを必要としている人が多くいるかもしれないと気づいたのだ。
そこで、各会社から秘密道具のアイデアを提供してもらったことで、今で
は数多くの舗装道具をそろえることができた。「各会社に眠る秘密道具の
アイデアを1か所に集めることで、必要としている声にもならない小さな
ニーズに答えられるようになった。各会社が協力していただいたことによ
って成功できたと思う。ここまでくると、今までライバルだった人たちが
協力し合う仲間のような立ち位置に変わったと思う」と、下田社長は喜ん
でいた。
シモダ道路のこのような小さなニーズへの応答は、駐車場整備にも目を向
けられるようになった。道路を作ったならば整備し、維持し続ける必要が
あるように、駐車場も整備することが必要だ。また今後、地方では特に高
齢者や女性ドライバーが増えていくことも考えられるので、その方たちが
駐車しやすい環境づくりをすることが、停めにくさへの潜在的なニーズの
応答につながると思っている。シモダ道路では、今後必ず駐車場への需要
が高まっていくことを予想し、駐車場の専門店を目指していくつもりだ。
下田社長も「駐車場はお店の玄関口に相当する。駐車場の整備をすること
は必ず必要になるのだから、積極的に取り組んでいきたい。」と意気込ん
でいた。
シモダ道路では、周りの小さな声や、潜在的なニーズにとても敏感だと思
う。下田社長が「生きるための着眼点だった」と振り返られるように、そ
こにはとても重要なニーズがあった。シモダ道路はそんなニーズを受け止
めて応えようとしているところに魅力があると思う。