お風呂につかって、心も体も癒される。日本人なら誰しも味わったことが
ある感覚だろう。この日本の温浴文化を海外へも広める。そんな夢を追っ
ているのが日本温浴研究所だ。中京大学3年の柴田さん、愛知淑徳大学3
年の服部さん、2年の工藤くんが、星山社長のビジネス哲学、そして温か
さに取材を通して触れてきました。
温浴文化とは私たち日本人には馴染みが深く、癒しと安らぎを与えてくれ
る存在である。そんな日本独特の温浴に力を注いでいる株式会社日本温浴
研究所へ取材に向かった。
株式会社日本温浴研究所の1番の魅力は「人とのつながり」を大切にして
いる点である。利益よりもまず良心をもって人とつながり、相互の強みを
活かし助け合う。そして、さまざまな企画事業にチャレンジをすることが、
相互会社の発展のみならず社会の貢献へとつながると星山社長は考えてい
る。この「人とのつながり」を意識したきっかけが東日本大震災だった。
困難な時でも互いに思いやりを忘れることなく助け合う日本人独特の心遣
いこそ、私たちの誇りにするべきものだと社長は語る。
そんな「つながり」を施設内でもいくつか見つけることができた。
施設内には、岐阜県の農家で作られている野菜が販売されている。商品と
して販売できない野菜を安い価格で農家から買い取り、温浴を楽しみに来
られたお客さんに安い価格で提供をする。さらには、現在17社の顧問企業
と連携をしており企画から商品開発など幅広い事業を行っている。施設内
にはさまざまな商品が並んでおり、まわりとのつながりの深さを感じ取る
ことができる。このように周りを巻き込み、プラスの循環を生み出すのだ。
また、星山社長は人とのつながりの上での「心遣い」を忘れない。施設内
には休憩施設や食事処はもちろん、本格的なマッサージ、美容室まで備え
ている。美容室は深夜23時まで営業しており、仕事終わりに散髪をする時
間のない人でも気軽に利用することができる。お風呂前にあわせたカット
プランを低価格で提供するなど、星山社長のお客さんへの心遣いが表れて
いた。近いうちに託児所も設備したいと女性への気配りにも積極的である。
さらに、日本の繊細な心遣いが伝わるように従業員には勉強会に参加させ
るなど運営教育にも力を注いでいる。
「安定志向こそが不安定。」という星川社長の言葉が特に印象に残った。
今後若手がどんどん社会の負担を背負わなければならない時代がくるから、
どんな荒波にも耐えることのできる忍耐力と精神力が必要である。そのた
めには、若いうちから苦労する道を選択してチャレンジしていくことが大
事だと社長は語る。就活生の私にはとてもガツンとくる言葉であり、取材
にきた私たちにまで気を配り、働くことの大切さを話してくれる星山社長
の心遣いに温かさを感じた。
今後は温浴文化を日本の繊細な気遣いのサービスと共に海外に発信したい
と考えておられ、ネットでの薬草湯販売を展開している。チャレンジ精神
と向上心をもち続け、会社とお客さんとのつながりはもちろん、他企業と
のつながりまでも大切にした心遣いを忘れない。そんな人情の溢れた「心
の循環」を国内外へと発信していく魅力的な会社だ。
星山社長は過去に各務原市の民間代表を務めており、地域活動や商品開発
を通して人脈を広げていった。そして今は、17の顧問企業と連携して事業
をおこなっている。17もの顧問企業と関係を結ぶことができるのは、星山
社長と顧問企業先の『思いやり』の関係があるからだ。自分が相手のため
を思って助けると相手も自分のためを思って助けてくれる。その思いやり
の心が大きくなっていくことが心の循環となっていくのである。さらに、
ボランティアや事業などの活動を継続していくためには利益を上げる必要
がある。顧問企業とともに温浴技術を活かした事業をしていくことで利益
を上げ、さらに事業を継続していくことで経済性の循環も起こしていく。
温浴事業を通して心と経済性の循環をし、幸せを創造しているのである。
また、「海外に温浴文化が浸透している国は少ない」ことをチャンスとと
らえ日本の温浴文化を世界に広げる先駆者として国内外問わず、日本式に
こだわった銭湯の設計やプロデュースを行っているのである。
女性の職場環境の改善にも取り組んでおり、従業員もお客さまも利用でき
る保育施設の設立、子どもがいても働きやすい時短労働などを行っている。
従業員が満足して働ける環境をつくることで良いサービスがうまれ、お客
さまの満足につながりまた来ていただける、そのような『循環』も起きて
いるのだ。
「安定志向は一番不安定。若いうちから苦労し、世間の荒波に耐える力を
得ることが『向上心』や『チャレンジ精神』につながっていく」と星山社
長は語る。「苦労は買ってでもしろ」という言葉があるように、人は諦め
ない、辞めない前提で物事を続けることで自らが成長しスキルアップをし
ていく。近年、手に職をつけることができる仕事に就こうという学生が多
いが、なぜその仕事に就きたいと考えたのか、その想いが重要なのである。
例えば、「安定した収入を得たい」からなのか「信念を持って働きたい」
からなのか、この2つの理由では、天と地ほどの差があり、前者ならば、
つらいこと大変なことに遭遇した時に、はたして耐えることができるのだ
ろうか。世間の荒波にもまれ、その荒波に対して耐える力があるのかどう
か。その力こそが「安定」ということなのではないだろうか。
日本温浴研究所は、日本の温浴文化を日本及び海外に提供している会社で
ある。社長は、星山道弘氏だ。星山社長の、第一印象はとても落ち着いて
いる方というものであった。しかし、いざ取材が始まるととても熱い思い
を秘め、同時に人に対して本当に温かい心を持っている人であった。
この仕事の魅力を聞いてみると、世の中にはあらゆる接客業が存在する。
その中でも温浴業はお客さまの喜びをとても多く感じられるところが良い
という。お客さまからの差し入れは本当に沢山あるそうだ。なかには、毎
回お菓子を持ってきてくれるお客さまもいらっしゃるらしく、その方々の
笑顔をみることが本当に嬉しくエネルギーをもらえると笑顔で話す。
どうしてここまでお客さまから信頼を得られるのだろうと取材をしながら、
考えていると星山社長の人柄が関係していると私の中で答えが出た。
星山社長は、心から人を大切にしている。どうしたらそういう風になれる
のか問うと、人付き合いにおいて上手くいく人と上手くいかない人の話を
してくださった。
上手くいかない人は、計算をして人と付き合う人。この人と付き合ってい
れば得だからと、自分のことだけを考えて失敗した人を何度も見てきたと
いう。人間ならば誰しも欲や執着、成長したいという思いがある。しかし、
その欲も方向性を間違えると人からの信頼を失いかねないのだ。
これに対して、上手くいっているのは人と分け隔てなく接することができ
て回りを自分の都合のいい人で固めない人だそうだ。時には、自分に厳し
い言葉を投げてくれるような人がいて思い通りにばかりいかない環境の方
が人として成長することができるという。
一見、基本のことのように思えるが改めて人の付き合い方というものを考
えさせられた。このような考えにたどり着くまで、多くの人たちとの付き
合いがあったからこそ、今があるという星山社長。日本温浴の仕事に主体
的に協力している企業、団体も多くこれも温かい社長の人柄が周りの人々
を動かし協力したいと思わせているのだと心から感じた。
また、海外展開に対しても積極的だ。しかし、お風呂にあまり親しみがな
い国などで市場を開拓していくのは難しいのではないかと問いかけてみた。
星山社長は、あまり親しみがない国でも、ないからこそ日本の文化温浴を
広めるチャンスだという。
まさに、チャンスと取るかピンチととるか。どのようなときでも、顔を上
げて前に進み続ける星山社長だからとても温かい雰囲気が感じ取れるのだ
と思った。温浴には、体を温めるだけでなく心も温める力がある。これか
らも、たくさんの人がここに訪れ笑顔になっていくのを想像したらまた気
持ちが温かくなった。