「量産品には絶対に手を出すな」が創業以来のポリシー。試作品専門の板
金加工を主軸事業としている恵美グループ。工場や社内からも林社長のさ
まざまな創意工夫や従業員への愛が感じられる取材を名古屋市立大学3年
原田さんが行いました。
試作事業が主な軸。一品一様の商品を1個単位からお客様の要望に会わせ
てjust in time で提供できるのが強みだ。
試作とは、3年、5年先の仕事を請け負っているのだと林社長は語る。だ
から現在の景気に左右されない。そして、機密情報が流出しないよう海外
には出て行かないのだ、と。
あえて大量生産に踏み切らない、安易な価格競争に身を投じないという確
固たる意思がある。
林社長は従業員のことを本当に家族のように思っており、例えて言うなら
ば、「親父さん」。おおらかで、よく笑い、ざっくばらんな性格で、器量
の大きな方だ。その林社長の性格が、恵美グループの社風を作っているの
だなと実感した。
そして工場見学をして、まず驚いたのが、板金工場とは思えないほどきれ
いで、明るくて、カラフルな工場内部。柱や壁や機械が桜色や黄色、青色、
黄緑色に塗られているのだ。
これも林社長の意向だという。理由を聞いたら、「板金のような無機質な
ものを扱っていて、なおかつ地味な工場色の中で働いていたら、気分が沈
んでしまうではないか、」と。一通りまわって説明をしていただいたが、
工場が機械だらけなのに驚くほど静かで普通に会話する音量で十分聞き取
れる。
また、部外者の私たちが突然現場に顔を出しても、従業員の方はどのセク
ションの方でも快く挨拶をしてくださって感動した。
プログラミングの部署では、女性の技術者が多いことに目がひかれた。
林社長に、働く目的とはなにか聞いてみたところ、昔は自分のため。今は
会社の社長として、従業員の皆さんが安全に、安心して、安定して長く働
ける職場作りのために継続的に利益を生み出すこと。それが全て。そのた
めには立ち止まっていてはいけない。“待ち”でなく“攻め”の姿勢で、どん
どんチャレンジしていかなければと語る。
「どんなに高価でいい機械をいれたって、それを使う優秀な人がいなけれ
ば意味がない。うちの高い技術力を支えているのはうちの優秀な“従業員”
であるのだ。」と誇らしげに語る林社長の姿も印象的だ。
「だからこそ私は従業員の皆さんにとても感謝をしている。」この台詞は
林社長が取材中繰り返し仰っていた台詞であり、私が一番グッと来た台詞
である。必ず手を胸の前で合わせながら“感謝”という言葉を口にされるの
で、本当にこの方は従業員を大事になさっているのだなと実感した。
恵美グループ社内の福利厚生は驚くほど充実している。全ては、意欲を持
って働く従業員に気持ちよく働いてもらいたいという気遣いからだ。女性
の復職率も高い。それだけ魅力的な職場という証明である。
「そして、仕事をくださるお客様にも感謝を。」
お客様の要求に応えたいと思う熱意が、社長からも、従業員からも同じ温
度のものが伝わってくる。
板金屋とは思えない、ユニークな発想も魅力の一つだ。
林社長の趣味から派生したすばらしい商品をいくつも見させていただいた。
どれも発想は飛躍しているが、もはや板金工場にいるとは思えないと錯覚
させるほどの多種多様なものづくりの現場がそこにあった。まず新しい技
術を生み出し、そこからあたらしい価値や商品が生まれるのだ、という考
え方はとても前衛的で、挑戦的で、カッコイイなあと思った。
恵美グループの魅力は、林社長のお人柄と、従業員とお客様を本当の意味
で大切にする社風だと私は感じた。