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150年余りの歴史の中で変わらない風景と、時代に合わせて変えたこと。
江戸時代から続く老舗旅館の流行に流されない本物の「おもてなし」を感
じる取材を岐阜大学3年の杉本さん、塚原くん、山口くん、天野くんが行
いました。

十八楼は今年で153年目になる岐阜でも歴史ある老舗の旅館。今回の取材
を通して、十八楼の魅力とは、当たり前のことを当たり前にできる社員た
ちだと感じた。例えば、お客様と接するときは名前で呼ぶ、通路で会った
ときは立ち止まって挨拶する。旅館ならばそんなこと当たり前ではないの
か?と思うことでも、実は出来ていないことが多いらしい。そんな「当た
り前」のことを意識的に心がけるようにと、伊藤専務は社員全員に声をか
けている。掃除のおばさんや窓拭きのおじさんであっても同じようにお客
様に接する。技術やスキルだけではお客様は満足しない。その先の「当た
り前」の思いやりにお客様は感動を覚えるのだという。そのお客様の感動
や評価の声は、社員にとってのプライドと自信になる。社員ひとりひとり
のプライドは、仕事に対する向上心を高める。お客様と接する中で生じる
意見やアイデアを、持ち場ごとに言い合える環境ができていることも魅力
だと感じた。

最近では、旅館とホテルの違いも曖昧でお互いが良いところ取りをしあっ
ているために、顧客目線では違いもわからなくなっている。本来なら和室
オンリーの旅館でも、近年では畳にベッドを置いたり、ホテルでも温泉が
設備されたりしている。そうしたホテル・旅館業界の流行りに、十八楼は
流されない。これまでの歴史や、十八楼が大事にしたいコンセプトに合っ
たものを選び、若女将のセンスを最終判断として少しずつ取り入れる形を
とっている。
それは、これまで長良川・川原町と共に居続けてきた歴史と、これからも
この場所に居続けるという想いがあるからだそうだ。その想いをふまえて、
食事処として利用されている別館の「時季の蔵」は、120年前に川原町に
あった蔵を組み直して、今の時代に合った形で利用されている。

こうした社員ひとりひとりの努力と思いやりあっての当たり前のサービス
と、十八楼のこれまでの歴史に裏付けされた想いが十八楼ブランドを作っ
ていくのではないかと取材を通して感じた。十八楼ブランドとは、長良川
ブランドが目指す「そこに行けばいろんなことができる」という「着地型
観光」に寄り添って、共に成長していく。これから十八楼ブランドがどの
ように作られていくのかがとても楽しみだ。
 

江戸末期から現代まで150余年という長い年月を十八楼は時代に合わせて
姿、様式を変えて長良川のほとりで旅館業を営んできた。近年では日本の
温泉100選(2012年度)に長良川温泉が選出されており、今も昔も岐阜・
長良川を代表する旅館の一つである。今回はあらゆる業種の中でも旅館業
という特別な業種に携わる企業を取材した。自分は「なぜ150年以上経営
を続けることができるのだろうか。きっと親しまれ続ける魅力が十八楼に
あるのだろう。それを取材で発見したい。」という想いで取材に臨んだ。

取材で感じた十八楼の魅力の一つは従業員の働きやすい環境を整える為に
旅館業にあえて効率化を重視した経営コンサルという切り口で組織改善を
しているところだ。専務の伊藤さんは十八楼に勤める前は旅館業に関係な
い大手自動車会社に勤めていた。そこで学んだ経営ノウハウを十八楼でも
適応させていくことで、より効率的な経営を可能にした。取り組みの中で
まず驚いたのは旅館が株式会社という形態を取っていること、さらに、見
える化、先入れ先出しなどより組織として働きやすくなるような仕組みが
普段の業務で適応されていることも驚きだった。これらの取組みをした目
的はお客様により満足をしていただく為である。

取材中に終始話されていたのは一貫して十八楼のお客様に対する想いだ。
それを一番強く感じたのは「当たり前のことを当たり前にやる。お客様は
スキルでは感動をしない、従業員の思いやりが大切である。」という伊藤
専務の言葉だった。例えばお客様の身の回りのお世話をする従業員だけで
なく、普段はお客様に直接関わらない清掃担当の従業員も廊下でお客様と
すれ違う時にしっかりとお辞儀をすること、このような言葉にしてしまえ
ば、当たり前に感じてしまうようなことができていることが大切だ。しか
し、このような当たり前に感じることもしっかりとできていない瞬間は存
在する。十八楼はそのつい見逃してしまいそうな当たり前の動作にもこだ
わっている。自分はこの当たり前の繰り返しがお客様に感動を与えること
ができ、また来たいとお客様に思われる秘訣に繋がっているのだと感じた。

また十八楼はより多くの方に利用していただく為に町づくりとの一体化
「長良川温泉」の知名度の向上にも積極的に協力している。最近では「長
良川おんぱく」にも参加し、十八楼の周囲に広がる川原町の魅力を多くの
方に広めている。この取り組みには老舗でもその土地と歴史に依存してい
くのでなく、共存していくことでさらに長良川温泉ないしは十八楼が全国
に広がることを目的としている。いずれは東海地区や全国から長良川温泉
に行けば、何か楽しいことがあると多くの人が訪ねてくるような場所にし
たいと伊藤専務はこれからの展開を話してくださった。
取材を通して働いている人達の能力を存分に発揮できる組織力や環境が整
っていること、これが十八楼の魅力だと感じた。

四季折々の表情を見せる金華山、1300年の伝統漁法を伝える長良川の鵜飼、
風情あふれる町屋が並ぶ川原町、今もなお昔ながらの風景が残る土地に150
年以上旅館業を営む十八楼がある。最近では「長良川おんぱく」の活動も
あり、岐阜の魅力的な歴史や文化に触れることのできる選択肢が増えてき
たことによって、ますます十八楼が岐阜の観光の拠点として多くの方たち
に期待されていることは間違いないだろう。岐阜に住む方々にも岐阜を訪
れる方々にも愛され続けている旅館、それが十八楼である。

十八楼で働くスタッフは、全体で共通する思いを持っている。それは、
「目の前のお客様に喜んでもらいたい」という思いである。しかしそれは、
何か特別なことをやるということではないそうだ。取材させていただいた
伊藤専務は、「当たり前のことを当たり前にやること。新人のスタッフで
も、清掃のスタッフでもお客様に出会えば立ち止まり頭を下げる。目を見
て話す。そんな当たり前だと思う事をやることが大切だ。」とおっしゃっ
ていた。十八楼では、和のマナー研修をする。しかし、マナーは最低限の
スキルという位置づけだそうだ。相手に不快な思いをさせないのが当然で、
さらにそこからいかに相手に喜んでもらえるように創意工夫するか、とい
う意識をどのスタッフも共通して持ち続けている。

十八楼は最近、館内のお風呂をリニューアルオープンさせた。長良川温泉
は、「第26回にっぽんの温泉100選」で40位に選ばれ、また十八楼の大浴
場も「風呂100選」に選ばれた。お風呂ひとつとってもますます多くの方
に好まれるようになった。しかしそれも、十八楼のスタッフの方々が150
年間脈々と受け継いできた、「お客様に喜んでもらいたい」という気持ち
があるからこそ、お風呂や客室の良さがより際立つのだと思う。

そして、その思いは確かに十八楼に訪れるお客様に伝わっている。十八楼
のホームページには、お客様の声を掲載しているページがある。ほとんど
のお客様が、「良かった」「また来たい」と声を寄せている。一つ一つの
メッセージに十八楼も丁寧に返信されている。お客様と十八楼のスタッフ
の温かな関係性が垣間見えるページだ。揺るぎない歴史に十八楼ブランド
があるから、多くの方に愛される旅館であり続けるのだ。

十八楼は「旅のプロが選ぶ2012年度人気温泉旅館ホテル250選認定」や「2
012年度部門別旅館ホテル100選」で賞をとっていて、なかでも目を引くの
が「JTB 2011年度サービス最優秀旅館ホテル受賞」である。十八楼は自身
のホームページに掲載されている「お客様の声」や楽天、じゃらんなどの
口コミでそのサービスがいい評価を受けている。つまり十八楼は高いサー
ビスを私たちに提供している。

では、十八楼のサービスの源は何であろうか。専務は「高いサービスは従
業員一人ひとりが相手のことを思って、当たり前のことをしているからだ。」
とおっしゃっていた。しかし、当たり前のことを当たり前にすることと相
手のことを思って行動をなすことは難しい。当たり前のことを実践できて
いる従業員の方々には何かあるのではないか。何かとは、十八楼という老
舗旅館のブランド力が従業員のプライドと自信を生み、プライドがモチベ
ーションとなって従業員は相手のことを思って接客をする。お客様のこと
を考えた接客が評価されることによって、モチベーションにつながりさら
に考えて接客をする。今までに述べた好循環のサイクルが生まれることに
よって高いサービスを生んでいる。

つまり、十八楼のサービスの根源は十八楼のブランド力であると思われる。
十八楼は長良川の川原町にある江戸時代から続く歴史のある旅館である。
歴史が長いということは、今まで培ってきたことがある。それは、十八楼
のイメージにつながり、十八楼というブランドを生んでいる。

これからも、十八楼はその地元に根差していかなければならないし、その
伝統を守らなければならない。しかし、守るだけでは生き残れない。まち
とともに進化していかなければならない。変わりすぎては十八楼ではなく
なってしまうため、さじ加減が難しいところだ。
さらなる飛躍をするため、今後十八楼がある長良川の日本での認知度をよ
り上げたいと考えている。秋に開催された「おんぱく」では着地型の観光
が浸透してきた。着地型の観光とは長良川のことをまだよく知らないお客
様が旅行に来たときでも旅行者が楽しめる体制をつくることだ。その体制
とはその地域でおすすめの観光資源をもとにした旅行商品や体験プログラ
ムを企画・運営する体制のことである。この体制が整うことにより、さら
に日本全国から旅行客が岐阜に訪れ、岐阜の素晴らしさ十八楼の良さが知
れ渡るであろう。


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