自動車部品の中で消費者が一番目にし触れる部分の多くはプラスチックで
覆われている。そのプラスチック部分を作るために必要な金型を作ってい
るのが黒田製作所だ。布で覆われているのが一般的だったスピーカー部分
もプラスチックで覆えるようにし、製造工程や生産コストの引き下げに一
躍買った。そのようなオーダーに応えるために、どんな工夫をしているの
か、岐阜大学2年の伊藤くんが黒田社長に尋ねてきました。
開発へのチャレンジ精神とテクノロジーにプラスワンという発想を持って
いる企業。黒田製作所では金型を取り扱う企業として、主に自動車の内装
部品を製造している。黒田製作所の技術を物語る製品がスピーカーグリル
だ。それも金型から製作している。なにが特別かというとスピーカーの細
かい穴を金型で製作するには高い技術力が必要である。一般的に考えて、
金型で細かい穴を開けると細かすぎて穴が埋まってしまう。普通の金型会
社だったら、スピーカーグリルなんて金型で作ろうとは思わないし、作り
たくてもすごい技術力を要するので作れるものではない。そこを黒田製作
所では長年の開発の末、生産可能にしてきた。スピーカーグリルの他にも
主に車の内装部品を金型から製造。同業他社が少ない分野で、難しい技術
の継承もISOでマニュアル化して社員に浸透させている。
社員数は100人以上。数人の技術職しかおいていない企業も多い岐阜県内
の金型業界では大規模の企業である。しかし元は町工場ほどの規模だった
という。社員数はなぜ大規模に増えたのだろうか。その秘密は前に述べた
技術力にある。やれないことに挑戦し続ける姿勢、開発へのチャレンジ精
神で一歩ずつ着実に前進させてきた。開発、製造への想いは強い。自分た
ちが設計した金型で製造した完成品を見に行く社員が多いという。自分た
ちの技術で作ったものが世に出まわるという、モノづくりの喜びを感じ、
他社が真似できない金型を製作している。その一歩一歩が大規模な社員数
を実現させている。
それではその技術力の裏には何があるのか。黒田製作所では「サービス」
という概念を積極的に取り入れようという思いが強い。職人気質で頑固、
そんな人が多いと思われがちの金型業界。黒田製作所では他社が真似でき
ないような金型を製作するため、顧客対応や社内環境にも工夫を凝らし、
ただの加工技術者ではなく、「人との関係を大事にする金型技術者」を育
成している。黒田社長は製造業の堅いイメージを覆したいという思いから、
金型技術職にも最低限のビジネスマナーを研修させるなど、社内の環境整
備を優先して行っている。“いい製品を短納期で安定供給を可能に”とい
う当たり前のことを当たり前にする努力は人の心に寄り添うモノづくりが
根底となっている。また黒田社長は、評価を実力主義にして、平均年齢の
若い職場を実現した。それらが現在の黒田製作所の技術力を支える理由と
なっている。
例えば、今までの技術職というのは人付き合いが希薄と思われがちだが、
基本的に忘年会は全員出席、対人サービスの研修を実施するなど、技術職
にはあまりみられないことを若い社員に推進している。そのように顧客対
応、社内環境に工夫が凝らされているからこそ、黒田製作所の高い技術力
が実現する。
人柄がよく、顔を合わすと必ず清々しく挨拶してくれる社員さん。技術職
ではあまり徹底されている企業は少なく、すごく気持ちの良い取材であっ
た。