家とはなんだろう?家族とはなんだろう?仕事とはなんだろう?人の営み
の中で大切なことでありながら、じっくり向き合って考えてみる機会は少
ないのではないだろうか?「社会福祉法人美徳会」は西尾理事長自身の介
護経験がきっかけとなって設立された施設である。どのような想いで設立
し運営しているのか、愛知淑徳大学3年の服部さん、岐阜大学3年の長瀬
さんが聞いてきました。
「社会福祉法人美徳会」を設立したきっかけは西尾理事長の義父の介護で
あった。西尾理事長は義父を26年間介護し、介護の苦労を経験してきた。
当時、多治見市には老人介護施設が2つしかなく、「まだまだ周りに介護
で苦労している人がいる。その支援ができれば。」という思いで多治見市
に「社会福祉法人美徳会」を設立した。
社会福祉法人美徳会は、ヘルパーステイション、デイサービス、訪問介護、
ケアハウス、特別養護老人ホームなどの事業を展開しており、利用者のニ
ーズに合わせて利用することができる。また、介護施設の入居者の方の心
安らげる、落ち着ける家の環境づくりに注力し、西尾理事長自ら毎朝施設
内を回り、入居者一人ひとりの変化をすぐに察知し言葉をかけている。取
材時に見た西尾理事長が入居者の手を触れ、目を見て言葉をかけている姿
から、『心の通った思いやりのある介護』を感じ取ることができた。
西尾理事長は以前、夫婦で会社を経営していた。その経験から従業員、さ
らには従業員の家族を守るという意識を持つようになり、今でも職員や職
員の家族を守るという思いは変わっていない。職員をとても大切にしてお
り、岩塚事務長もそれを実感していた。さらに、職員を大切にしているこ
とから、職員全員は何らかの責任者という役割を与えられている。1年目
の職員から簡単な仕事の責任者につき、年々経験をつんでいくことでより
難しい仕事の責任者につくようになる。職員は責任者としての重要性、や
りがいを実感することで、やる気、介護サービスの質の向上につながり、
入居者の方に満足してもらえる。このような、入居者の方が『住んでよか
った』、職員が『働いてよかった』という環境づくりをしている。また、
職員のキャリアアップにも力を入れており、介護技術向上に向け職員に積
極的に研修に参加させることやケアマネジャーなど、さまざまな資格取得
を支援している。現場での経験、介護技術、資格取得などから総合的に見
て良い人材は担当や役職につくことができるのである。
高齢化社会が進む日本において介護事業は、さらに大きくなっていくに違
いないが、介護をする人間が少なくなってしまうという深刻な問題も意味
している。西尾理事長はこれらのことをとらえ、健康年齢を高めるための
講座を開き多くの人に訴え、介護を必要とする期間を少しでも減らしてい
くという活動を今後も続けていく。
“心が安らげる家”は美徳会が大切にしているコンセプトである。美徳会
では、心が安らげて落ち着いて生活できる環境づくりのために特に大切
にしていることが二つある。
一つ目に、心の通い合いである。美徳会の西尾理事長は、毎日施設中を
回って、利用者に「おはよう」「元気?」と声をかけて回る。利用者の
様子を見ていつもと変わった様子だと「今日はどうしたの?」と声をか
け体調を気遣う。こうした毎日のやりとりは利用者の状態を把握するだ
けでなく、利用者にとっても毎日気遣ってくれることはうれしく、信頼
関係を築くことにつながる。また、職員と利用者の間にも心の通い合う
関係がある。言葉がけ一つ、介助一つに相手を思いやる気持ちが込めら
れている。こうした日々の積み重ねから心の通い合う関係が築かれ、利
用者が本当の家のように安らぎを感じられるようになる。二つ目に、本
当の家のような生活である。家で生活していれば時々外食をするのと同
じように美徳会でも利用者の行きたいお店にご飯を食べに出かける。お
風呂は温泉の大浴場のように解放感があり安らげる空間である。建物自
体も心の安らぐ絵がところどころに飾ってあり、掃除がいき届いていて、
安らげる空間づくりがなされている。利用者の様子を見ていると、笑顔
がたくさん見られ安らいで生活している様子であった。“心が安らげる家”
が実現していた。
この施設をつくられた西尾理事長は、ご自身が仕事と介護の両立の大変
さを経験された。「わたしのように苦しむ人がいるかもしれない。少し
でも助けられたら。」という思いでこの施設を設立した。利用者やその
家族や職員を大切にされる西尾理事長の理念が実際のサービスに反映さ
れているとても温かい空間であった。