木材販売を中心事業として120年以上の歴史を持つ後藤木材。経営学の
父とも呼ばれるドラッカーのもとで、その教えを学んだ後藤専務はその教
えをどのように自社に活かしているのか。三重大学4年羽田くん、愛知淑
徳大学3年大久保くんが取材を通して学んできました。
工場内に漂う木の香りと、胸に響く機械音のなか、工場を見学させていた
だいた。スギ、ヒノキ、ベイマツ、ホワイトウッド。住宅に利用される構
造材は、樹種によって色味も質感もさまざまだ。後藤木材のプレカット工
場には全国・世界から集まった木材が加工されている。工作機械によって
全自動で加工される木材もあれば、職人による手作業で丁寧に加工される
ものもある。
近年、住宅建築業界では、流通の短絡化やプレカット材の普及など、急激
な変化が起こっている。その渦中で、後藤木材は一貫して無垢の木にこだ
わり、事業に取り組んでいる。
大学で森林や木材について専攻する自分にとって、後藤木材の取り組みは
驚きの連続だった。品質へのこだわり、在庫・生産の徹底的な管理、工務
店への丁寧なサポートなど、メーカーと工務店の双方向に必要とされるた
めの工夫の数々。それらの工夫の積み重ねが後藤木材のブランドを確立し
た。「おかげさまで、他の企業では受けられないような難しい案件は、後
藤木材に頼もうと言ってもらえるまでになりました」と後藤栄一郎専務は
おっしゃった。
カリフォルニアのクレアモント経営大学院ドラッカースクールでMBAを取
得した専務は、恩師ピーター・ドラッカーの言葉を教えてくださった。
「何をもって憶えられたいかを突き詰めることが大切です。そのために、
自分自身を知る必要があります」。そして、微笑を浮かべながら続けざま
にこう言った。「一方で、いくら非難されてもやり続けることはもっと大
事です」
後藤木材は120年以上前に白木商としてはじまり、岐阜に根ざして木材
に関わる仕事に取り組み続けてきた。現在では事業は広がり、木材から建
築資材、住宅設備まで多品種にわたって販売をしている。工務店に対して、
家づくりを総合的にサポートすると同時に、木材に関わる姿勢は創業から
変わらない。「いつまで経っても、無垢の木にこだわり続けます」そう口
にする専務の眼には計り知れない意思が垣間見えた。
来春からぼくは社会人になり、木材商社で働くことになる。学生としてで
はなく、商社マンとして後藤木材とお仕事をさせていただくことができる
日を心待ちにしている。
後藤木材の特徴としては3つあると考えられる。
一つ目は、お客様の範囲が幅広いということだ。地元の岐阜だけでなく、
隣の愛知県や静岡県、東海圏外では京都府、富山県と全国各地のお客様に
愛されている。また、木材の販売だけに留まらず、建築資材や住宅設備も
扱っており、老人ホームや幼稚園など個人住宅以外の施設からも依頼がく
るという。最近では、新東名高速道路のサービスエリアにあるウッドデッ
キも手掛けたという。こんなにも自分たちにとって身近な施設に関わって
いたのだと聞き驚いた。
二つ目は、社員の育成に力をいれていることだ。
そのなかでも、後藤専務は社員の自発性を大切にしている。言われたこと
しかできないのではなく、自分たちから何か発案でき、行動できることが
大切なのだ。今年は、その自発性をより育てるために、13人程度で1チ
ームをつくり、6つの新しいプロジェクトを各チームに任せている。
三つ目は、後藤木材が100年企業であるということだ。
100年以上続く企業は、日本の中では全体の3%のみだといわれている。
後藤木材は、時代ごとに重要な選択をしなければいけないときも、変化や
流行に無理に飛びつかずに、あくまでも後藤木材らしい選択をし、慎重に
事を運んできた。また、お客様に確実によいものを早く提供するための努
力も欠かさない。なかでも作業の回転率をいかに上げるかを試行錯誤し、
今のレベルに辿りついたのも要因なのではないかと考えられる。私は今春
より就活が始まる。まずはどんな企業で自分が働きたいかが重要だと考え
ている。後藤木材の取材を通し、少しだけ自分が大切にしたいことがわか
った気がする。