タイル市場全体の3割のシェアを誇る、日東製陶所。
昭和25年の創業以来、「タイル界のトヨタ」と
呼ばれるまでに成長した秘密を、
愛知淑徳大学2年の中條さん、大藪さん、小島さんが探ってきました。
私たちにあまりなじみがない、昭和25年から多治見市にあるタイル製造会
社の日東製陶所。中小企業だからこそできることを積極的に行うことで、
会社の働く環境を良くしていることに自信を持っている。
1つ目は、社員のやりたいことをきちんとやらせることだと社長は言う。
この会社にもともとタイルを作りたいと強く思い入社してくる社員は少な
いが、日々、社員同士がコミュニケーションを取りながら、仕事を行って
いく間にやりたいことが自然と見えてくるそうだ。例えば、タイルを使っ
たアクセサリーや雑貨を販売したい、営業の仕事をしてみたいということ
である。そういった社員のやりたいということを挑戦できる場を社長は出
来る限り与えるようにしている。社員に挑戦する場を与え、さまざまなこ
とを経験することで自分の仕事に自信や誇りを持って行うことができたり、
やりがいを感じたりできるという。社員の方々の仕事に対しての自信や誇
り、やりがいなどは企業訪問に行かせて頂いた時の社員の方々の表情を見
て分かった。社員の方々は皆さんとても笑顔で生き生きとしていて仕事が
楽しいように見えた。
2つ目は、夏休みに子ども達を対象とした夏の工作ボランティアある。普
段は、BtoBの取引が中心のため、どんな仕事をしているのか知ってもらう
機会がほとんどないが、ボランティアの日は自信を持って自分たちの作っ
たタイルを知ってもらう良い機会となる。この日を通して、子ども達がタ
イルを知ってくれたり、喜ぶ顔を見せてくれたりすると、とても嬉しく仕
事へのモチベーションが上がり、また自信を持って仕事をすることができ
るという。
この会社の1番の魅力は、社員1人1人が仕事に自信を持っているという
ことである。やりたいことに挑戦できる、自信や誇りを持てる、やりがい
を感じられる会社である。それがすべて社員の生き生きとした表情となっ
ている。毎日生き生きとした表情で自信を持って働けるこのような環境の
会社にとても魅力を感じた。
株式会社日東製陶所はタイルを作り、売り、そして形に残す。今回私はこ
の企業の社長に直接取材をしてきた。さまざまな質問をしていく中で社長
はこんな言葉を言われた。「きれいな環境でしかきれいな物は作れない」。
誰もが「確かに」とうなずけることであるが、上記でも述べたが、こちら
の企業はタイルを作っている。タイルを完成させるための工程では、窯で
焼く、というような暑くて毎日使うことで汚れも積み重なることがやむを
得ない部分も存在する。
しかし、そこで思い出すのがこの言葉である。
「きれいな環境でしかきれいな物は作れない」
さらに社長はこの言葉の前に「常に」とも付け足した。そのきれいな環境
づくりのために、社員から何を入れたらよくなるか、という声を集めて実
行されている。屋根に遮熱塗装をし、ミストがでる扇風機を設置して工場
内の気温を下げている。このミストは機械についても問題ないものを使用
しているそうだ。また、工場に冷凍庫を設置し棒ジュース(プラスチック
製の容器の中にジュースが詰められており、真中がくびれ、二つに割るこ
とができる)や冷たい首に巻くことができるタオルを常備。まだまだ良い
環境を作るため、社員たちのアイディアを募集していると言う。
さらに同社では環境について開かれる「6S委員会」がある。「5S」という
と「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」であるが、ここにもう一つ「安全
(Safety)」を加えて「6S」だ。やっと2年で形になった、と社長がいう
だけに「本気」でやっているそうだ。この委員会ではトップダウンではな
く、社員の発言を重要視している。
上記の環境作りに関して、主に発言は社員にあることが分かる。社長は
「コミュニケーションはすごく大事にしている」と、また、さらに「中小
企業だからこそやりたいことにどんどん挑戦してほしい」という。社員の
発言する場が多いと社員それぞれにやりがいを感じ、やりたいことに挑戦
しやすくなるのではないか。また、「企画室」というものも立ち上げ、月
に1度、社長自ら募り、参加したい社員で構成されているそうだ。とても
挑戦できるチャンスが多い。
「タイルを作るために入社してきた人はほとんどいないと思う。でも、だ
んだんタイルのことが好きになっていると思う」と社長がいう意味は、こ
の仕事に自信があるからであろう。そして社員たちもそんな社長から、こ
のタイルから、自信をもらっていくのだろう。「自信」これがこの株式会
社日東製陶所の魅力だと感じた。
町や家の外壁などあらゆる画面で使用されているタイル。元々タイルを作
る元となる釉薬を作っていた日東製陶所は、タイルを作るようになってか
ら市場全体の30パーセントのシェアを誇り、「タイル界のトヨタ」ともい
えるほどだ。タイルのほとんどはマンションや学校に使われており、一日
に生産するタイルの量は、4階建てのマンションが10棟建つほどだ。これ
ほどのシェアを誇り、毎日大量のタイルを作っている日東製陶所。10年前
は、香港向けのタイルも出荷していたそうだ。現在は、香港の他、台湾、
シンガポール、中国にも出荷している。若尾社長は、これからさらに海外
へ進出したいと話している。特にアメリカを中心に、日東製陶所のタイル
を広めていきたいそうだ。
そんな若尾社長は、何よりも社員同士の団結力や、地域との交流を大切に
している。お祭りでの出展や、ボランティアなどに積極的に参加すること
で、普段はほとんどみることの出来ないタイルを使っている消費者の反応
を直接見ることができる。普段直接タイルをよく見たり触れたりすること
はなかなかないので、このような機会を使いタイルの面白さや構造を知り
興味を持ってもらえることに、やりがいを感じるそうだ。他にも、自分た
ちの作ったタイルが町の外壁やマンションに使われているのを見ると、と
ても嬉しく、それがやりがいに繋がっていると若尾社長は言う。こうした
地域との交流のボランティアをしていることで、社員同士の仲の良さや団
結力は非常に良い。
そして、自分たちの作るタイルに自信と誇りを持てることのひとつに、い
つでも綺麗な工場を保つことを心がけているそうだ。「汚い場所で綺麗な
ものは作れない」という信念の元、「指示されてやらなければならない」
ではなく、自分たちが綺麗にしていたいと思えるような環境づくりをして
いる。そういった細やかな所まで配慮し、社員のみんなが生き生きと働く
ことができるところが、日東製陶所の魅力であり、会社の自信になってい
る。